疲れる理由 - 無駄な思考

俺の仕事は特に肉体的には極めて楽な仕事であるはずだが、一日の仕事を終えて帰ってくるとクタクタになっていることが多い。ここアメリカでも、また日本でも今や精神安定剤を片手に仕事をしている人たちが極めて多い。これらはつまり精神的な疲労であるわけだが、こうした疲労感がどこからやってくるか、長年の疑問だった。

結論から言ってしまうと、この疲労感は「頭でっかち」であることに起因するものであろう。要するに考え過ぎなのではないか、と思う。

人は自分の意志で「思考している」と感じるが、実はこれはまったく錯覚であり、人は自分の意志とは関係なく、様々なことを常に、片時も休まず「思考している」のだ。そして膨大なエネルギーを無駄に消費し、疲労を蓄積しているのだ。

そんな馬鹿な、と思う人がいるかもしれないが、簡単に検証できるので、まずは自分の意志で「考えない」努力をしてみることをお奨めする。

例えば「右足で着地」、「左足で着地」、「息を吸っている」、「息を吐いている」などと自分の動作を実況中継することに集中し、「思考をしない」ことを試してみよう。この自分の実況中継する方法を原始仏教ではヴィパッサナー瞑想と呼び、修行の中心においているようだ。ここではまあ、雑念が生じていていく感覚が分かれば良しとして試みてほしい。

おそらく1分以内に、まったく関係ないことをいつの間にか自動的に考えている自分を発見するであろう。こうやって自分を観察してみると、実に数秒ごとに新しい何かを考えている自分を発見することと思う。

そしてそのうちのいくつかの思考は頭の中でグルグル回り続けるのだ。例えばそれはその時々の心配事であったり、悩みだったりするであろう。しかし自分が意識していなくてもその思考プロセスはアウトプットを生むことなくひたすら続いてゆき、エネルギーを消費し続けるのだ。

こうした無駄な思考を断ち切るためにも、現代人は思考に頼らない習慣をつけて行く必要があると思う。

「よく考えることは良いことだ」という思い込みを捨て「考えることはエネルギーの浪費だ」と考えてみるのはどうだろうか?一日一回はなにか反射神経が要求されるような運動をして頭を空っぽにするというのはどうだろう?

工夫次第で無駄な思考を減らすことは出来ると思う。そしてそうすることで驚くほど疲れなくなるのだ。みなさんもお試しあれ。